MENU

三菱 ギャランGTO——ダックテールが跳ねた和製スペシャルティ、日本車が見たアメリカの夢

三菱 ギャランGTO の外観

後端が跳ね上がったトランク、長いボンネットに刻まれた抑揚。1970年代初頭に登場したギャランGTOは、当時の日本車の中でひときわ大陸的な雰囲気をまとっていました。三菱という、それまで質実剛健の印象が強かったメーカーが、はっきりと情緒に振った一台です。

TOC

ダックテールという造形の意味

ギャランGTOを象徴するのが、鴨の尾を思わせる跳ね上がったトランク後端、いわゆるダックテールです。これはアメリカのスペシャルティカーで流行していた意匠で、車体後方の気流を整える効果があるとされていました。

もっともこの車の場合、空力の効果よりも造形上の主張が前面に出ています。長いボンネットと短い客室、面のうねりを強調した側面。走る性能を数字で語るより先に、佇まいで気持ちを動かそうとする——スペシャルティカーという言葉が指すのは、まさにこうした性格の車でした。

セダンから派生した高性能版という王道

ギャランGTOは、量販セダンであるコルトギャランを土台にした二枚扉の派生モデルです。この作り方は当時の日本車では定石で、量産部品を使いながら専用の外板と内装、そして高性能なエンジンで別物に仕立てます。

シリーズの最上位にはDOHCの直列4気筒を積む仕様が設定されました。当時の日本でDOHCエンジンを市販車に載せられるメーカーは限られており、これを商品として成立させたこと自体が、三菱の技術力を示す出来事でした。のちにはより大きな排気量の仕様も加えられています。

国産スペシャルティカーの群雄割拠

同時代の日本市場には、トヨタや日産、いすゞがそれぞれ個性的なクーペを送り出していました。高回転型のエンジンで勝負する車、欧州的な端正さを狙った車、そしてアメリカ的な華やかさを打ち出した車。

ギャランGTOはその中で、最も分かりやすくアメリカを向いていました。日本車が欧州の模倣に傾きがちだった時代に、あえて別の水脈を汲んだ点が、今から振り返ると新鮮に映ります。

主要スペック

仕様の派生が多いモデルのため、代表的とされる範囲を示します。

項目内容
ベース車コルトギャラン(量販セダン)
車体形式2ドアハードトップクーペ
エンジン形式直列4気筒。上位仕様にDOHCあり
排気量1.6リッター級から、のちに拡大
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動
変速機4速および5速マニュアル、オートマチックも設定
外観の特徴ダックテール、長いボンネット、面の抑揚を強調した側面
生産年1970年代前半〜1970年代後半
性格和製スペシャルティカー

コレクターズガイド:再評価が進む一台

長らく国産旧車の中では脇役の扱いでしたが、近年は独特の造形が改めて注目されています。同時代の人気車に比べて現存数が少なく、程度の良い個体を見つけるのは容易ではありません。

  • 車体各部の腐食。特にリアフェンダー、フロア、トランク周辺
  • DOHC仕様かどうかの確認。エンジン載せ替えの個体も存在します
  • 専用の外板や内装部品の欠品。再生産品は限られます
  • 過去の改造歴と、標準状態への復元が可能かどうか

三菱の旧車は部品供給の面で厳しい面がありますが、愛好家の間で情報が共有されており、状態の良い個体は着実に評価を高めています。

三菱という会社の自動車づくり

三菱の自動車の歴史は古く、大正期にさかのぼる乗用車の製造例が知られています。造船や重工業を母体とする企業らしく、堅牢さと機構への真面目さがその特徴でした。

ギャランGTOはそうした社風の中で、あえて情緒に踏み込んだ例外的な存在です。のちにこの会社はラリーの舞台で世界的な成功を収めますが、その源流にある「作りたいものを作る」という気質は、この一台にも確かに流れています。

よくある質問

Q. GTOという名前はフェラーリと関係がありますか

A. 直接の関係はありません。GTOはグランツーリスモ・オモロガートの略で、複数のメーカーが用いてきた呼称です。三菱の場合はスペシャルティカーの車名として採用されました。

Q. のちの三菱GTOとは別の車ですか

A. まったく別の車です。1990年代のGTOはV6ツインターボと四輪駆動を備えた大型クーペで、このギャランGTOとは設計上のつながりはありません。

Q. MRという仕様は何を指しますか

A. シリーズ中で最も走行性能に振った上級仕様を指し、DOHCエンジンが与えられていました。生産数が少なく、現存する個体は限られます。

Let's share this post !

Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

TOC