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三菱 スタリオン——リトラクタブルとワイドボディ、直四ターボが吠えた和製GT

三菱 スタリオン の外観

低く構えた鼻先、格納式の前照灯、そして後から張り出したように盛り上がる後輪まわり——三菱 スタリオンの姿は、1980年代という時代の空気をそのまま固めたようです。しかしその見た目の派手さの下には、驚くほど筋の通った技術的判断がありました。

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あえて大排気量の直列4気筒を選ぶ

スタリオンの最大の特徴は、上級仕様に与えられた大排気量の直列4気筒ターボです。多気筒化が高級さの証しとされた時代に、あえて4気筒のまま排気量を増やすという選択をしています。

狙いは低い回転域からの力強さでした。過給機は排気の勢いで回るため、排気量が大きいほど低回転から立ち上がりやすくなります。振動という弱点に対しては、それを打ち消すための機構を組み込むことで対処しました。滑らかさよりも、踏んだ瞬間に前へ出る性格を優先した設計です。

ワイドボディが生まれた理由

後期に登場した、前後の車輪まわりが大きく膨らんだ仕様は、単なる意匠ではありません。より太いタイヤと広いトレッドを収めるための、機能から導かれた形でした。

出力が上がるほど、それを路面へ伝える接地面が必要になります。そのために車輪の位置を外へ広げ、車体をそこへ合わせて膨らませる。競技車両の考え方をそのまま市販車に持ち込んだこの手法は、以後の高性能車のひとつの定型になりました。

同時代の国産GTの中で

1980年代の日本には、格納式前照灯を備えた高性能クーペが数多く存在しました。直列6気筒の滑らかさを売る車、ロータリーの軽やかさを誇る車、四輪駆動を武器にする車。それぞれが異なる正解を掲げていた時代です。

スタリオンが提示したのは、太い低速トルクと後輪駆動という、どこか北米的な価値観でした。実際この車は輸出市場で強く支持され、三菱が世界で高性能車を売るための足がかりとなっています。

主要スペック

年式・仕向け地・仕様による差が大きいため、代表的とされる範囲を示します。

項目内容
車種区分2ドア・ファストバッククーペ(2+2)
エンジン形式直列4気筒 SOHCターボ(一部にDOHCの設定)
排気量2.0リッター級および2.6リッター級
過給ターボチャージャー。インタークーラー装着仕様あり
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動
変速機5速マニュアルおよびオートマチック
前照灯リトラクタブル式
特徴的な仕様車輪まわりを拡幅したワイドボディ
生産年1980年代初頭から1990年前後まで

コレクターズガイド:過給機付き旧車を選ぶ目

スタリオンは高性能車として使われ、また改造の対象にもなりました。手を入れられた個体が多いことを前提に、素性を見極める必要があります。

  • 過給機まわりの状態と整備記録。白煙や異音は要確認です
  • リトラクタブル機構の作動。モーターやリンクの劣化が起こります
  • ワイドボディ仕様は、拡幅部の内側と接合部の腐食に注意
  • 車体後部、フロア、サスペンション取り付け部の錆
  • 改造の内容と質。過給圧を上げた履歴がある個体は慎重に

専用部品の入手は難しくなっていますが、海外にも愛好家が多く、部品情報は国境を越えて流通しています。

三菱という会社の技術の系譜

三菱の自動車づくりは、日本でもっとも早い時期の国産乗用車の試みにまでさかのぼると言われます。重工業を母体とする企業らしく、堅牢さと機構への探究心が持ち味でした。

過給、四輪駆動、四輪操舵——三菱が1980年代に次々と手がけた技術は、いずれも他社に先んじるか肩を並べるものでした。スタリオンはその技術志向が、まだ後輪駆動の枠組みの中で結実していた時期の作品です。

競技の舞台で戦った日々

スタリオンはツーリングカーの競技や、ラリーの舞台にも投入されました。四輪駆動が主流になる直前の時代であり、後輪駆動で戦うことの難しさが増していく過渡期にあたります。

この経験は無駄になりませんでした。ここで蓄えた過給と車体づくりの知見は、やがて四輪駆動と結びつき、三菱がラリーの世界で大きな成功を収める土台になっていきます。スタリオンは、その助走路にいた一台でした。

よくある質問

Q. なぜ6気筒ではなく4気筒なのですか

A. 低い回転域から過給を効かせ、太い駆動力を得るために排気量の大きな4気筒が選ばれたとされています。振動の不利は打ち消し機構で補い、滑らかさより力強さを優先した設計です。

Q. ワイドボディと標準ボディはどちらが希少ですか

A. 生産期間や仕向け地によって事情が異なりますが、拡幅仕様は後期に登場したため総数が限られ、人気も高い傾向にあります。ただし拡幅部の腐食という固有の弱点があります。

Q. 日常的に乗ることはできますか

A. 機構自体は当時の量産技術で、扱いにくい車ではありません。ただし過給機と冷却系の管理、そして専用部品の欠品という課題があるため、旧車に慣れた工場との連携が前提になります。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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