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BMW 328——半球形燃焼室を横棒で開けた発明、戦前ドイツが生んだ軽量スポーツ

BMW 328 の外観

BMW 328は、1930年代の技術がたどり着いた一つの到達点です。排気量はわずか2リッター、出力は現代の小型車にも劣ります。それでも当時のレースで格上の相手を打ち負かし続けました。理由は明快で、軽さと空気の流れ、そして一つの独創的なシリンダーヘッドにあります。

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横向きの押し棒が生んだ半球形燃焼室

高出力を得るには、吸気と排気の弁を向かい合わせに傾けた半球形の燃焼室が有利です。ただしそれを実現するには、通常は二本のカムシャフトを頭上に置く複雑な機構が必要でした。

328の技術陣は、まったく別の解を選びます。カムシャフトは一本のまま側方に置き、片側の弁は通常どおり押し棒で開ける。もう片側は、燃焼室をまたぐ横向きの押し棒とロッカーアームを介して開ける——この仕組みによって、単純で軽く安価な機構のまま、半球形燃焼室を成立させたのです。

  • 側方に置いた一本のカムシャフトで、傾斜した二組の弁を駆動
  • 燃焼室をまたぐ横向きの押し棒という独創的な機構
  • 軽量な鋼管フレームと、絞り込まれた空力ボディ
  • 三連キャブレターによる吸気で、高回転域まで滑らかに伸びる

公称出力はおよそ80馬力とされます。当時の同排気量車を大きく上回る数値であり、しかも車重が軽いため、実際の速さは数字以上でした。

設計思想——速さは軽さから

328は大きな力で押し切る車ではありません。軽い鋼管フレーム、必要最小限の外板、そして前面投影面積を抑えた低い車体。当時としては例外的なほど空気抵抗に配慮した造形が採られ、覆われたヘッドライトと絞り込まれた車体後端がその意識を物語ります。

高い最高速を小排気量で得るという方針は、燃料消費と部品の負担を抑えることにもつながり、耐久レースで大きな武器になりました。

同時代のスポーツカーとの比較

1930年代後半、レースの現場では大排気量の過給エンジンが猛威を振るっていました。そのなかで328は、無過給の2リッターという控えめな構成で、クラスを超えた戦いを挑みます。

とりわけ1940年のミッレミリアでは、空力を意識した特別な車体を纏った個体が総合優勝を果たしたと伝えられます。戦後、この設計思想は英国のスポーツカーにも影響を及ぼしました。

主要スペック

項目内容(おおよその値)
エンジン形式直列6気筒・横向き押し棒による半球形燃焼室
排気量約1,970cc
吸気キャブレター3基
最高出力80馬力前後とされる
変速機4速マニュアル
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動
車体構造鋼管フレーム+軽量ボディ
生産台数450台前後とされる
生産年1936年〜1940年ごろ

コレクターズガイド——なぜ今も価値があるのか

328は、現存数の少なさと歴史的重要性の両方を備えた稀有な存在です。戦火をくぐり抜けた個体が限られるうえ、戦後に部品を寄せ集めて再生された例も多く、来歴の確認が何より重要になります。

  • 車台番号とエンジン番号の一致、当時の登録記録の有無が評価を左右する
  • 独創的なシリンダーヘッドは、扱える整備士が世界的にも限られる
  • 戦後に架装された車体を持つ個体も多く、素性の見極めが必要
  • 歴史的レースイベントへの参加資格が価値を支えている

この車を維持するということは、機械を保つだけでなく、記録を守ることでもあります。

BMWという会社の歩み

BMWは航空機用エンジンの製造者として出発し、青と白の紋章はその出自にちなむと語られてきました。二輪車を経て四輪へ進出し、当初は英国車の許諾生産から始まります。

自社設計の車を短期間で世界水準へ引き上げた象徴が328でした。戦後、同社は経営危機に何度も直面しますが、この車が残した「軽く、俊敏で、精密な直列6気筒」という思想は、後のモデルに一貫して流れています。

モータースポーツとその後

328の戦績は、耐久レースとロードレースの双方に及びます。特筆すべきは、クラス優勝を積み重ねながら総合順位でも上位に食い込み続けたことです。

戦後、このエンジン設計は英国に渡り、複数のスポーツカーやレーシングカーに用いられました。一つの技術が国境を越えて生き続けた例として、自動車史に確かな位置を占めています。

よくある質問

Q. なぜ2リッターで速かったのですか?

A. 軽い車体と空気抵抗の小さい形、そして高回転まで回るエンジンの組み合わせです。最高出力よりも、車重あたりの力と走行抵抗の少なさが効いていました。

Q. 横向きの押し棒とはどういう仕組みですか?

A. 一本のカムシャフトから、燃焼室をまたぐ棒を介して反対側の弁を開ける機構です。二本のカムを頭上に置かずに、傾斜した弁の配置を実現しました。

Q. 何台くらい残っていますか?

A. 生産数自体が450台前後とされ、現存数はさらに限られます。正確な数は把握されていませんが、市場に出ること自体が稀です。

Q. 戦後の英国車との関係は?

A. 戦後の賠償や技術移転を通じて、このエンジンの設計思想が英国のスポーツカーに引き継がれたことが知られています。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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