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マツダ ロードスター(NA)——絶滅しかけた小型オープンを蘇らせた、人馬一体の思想

マツダ ロードスター(初代)の外観

1980年代の終わり、小さな二座席オープンスポーツというジャンルは、ほぼ絶滅しかけていました。楽しいが壊れやすく、儲からない——そう見なされていたのです。その常識を、日本の一台がひっくり返しました。

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パワープラントフレームという発明

初代ロードスターの技術的な白眉は、エンジンと変速機、そして後輪の差動装置を一本の骨で結んだ構造にあります。パワープラントフレームと呼ばれるこの部材は、駆動系全体をひとつの塊として扱うためのものです。

狙いは、アクセルを踏んだり戻したりしたときに生じるわずかな時間差の解消でした。部品同士が別々にねじれると、動力の伝達に微細な遅れが生まれます。それを一体化によって抑え込み、足の動きに車が即座に応える感覚を作り出した——地味ですが、この車の性格を決定づけた工夫です。

人馬一体という言葉が意味したもの

ロードスターの開発を貫いたのは、速さではなく一体感を追うという方針でした。運転者が思ったとおりに車が動き、動いた結果が体に返ってくる。馬に乗る感覚になぞらえたこの理念は、以後この車の代名詞になります。

その実現のために選ばれたのが、軽い車体、前後の重量を均等に近づける配置、そして後輪駆動という古典的な構成でした。加えて格納式の前照灯や、短い距離で節度よく決まる変速レバーなど、触れる部分の感触にまで神経が行き届いています。

英国製ライトウェイトの後継者として

この車が手本としたのは、1960年代の英国製小型オープンスポーツでした。軽く、非力で、しかし走らせて楽しい。それらは魅力的でしたが、電気系統の不調や雨漏りといった問題を抱え、市場から消えていきます。

ロードスターは、その楽しさだけを受け継ぎ、信頼性という弱点を日本の量産技術で埋めました。故障を心配せずに、あの感覚を味わえる。この一点によって、途絶えかけたジャンルは世界規模で復活を遂げます。

主要スペック

仕様や仕向け地による差があるため、代表的とされる範囲を示します。

項目内容
車種区分2座席オープンスポーツ
エンジン形式直列4気筒 DOHC 自然吸気
排気量1.6リッター級。のちに1.8リッター級を追加
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動
変速機5速マニュアルを中心に、オートマチックの設定あり
車体構造駆動系を結合するパワープラントフレームを採用
足まわり四輪独立懸架
前照灯リトラクタブル式(初代の特徴)
生産年1980年代終盤から1990年代後半にかけて

コレクターズガイド:数はあるが良品は減る

生産台数が多く、いまも比較的見つけやすい車です。しかし年数の経過とともに、手を入れずに乗れる個体は確実に減っています。

  • フロント側の足まわり取り付け部や、サイドシル下端の腐食
  • 幌の劣化と、それによる室内への浸水
  • リトラクタブル機構の作動不良
  • 過去の改造。車高調整式の足まわりへ交換された個体が多く、本来の乗り味は失われがちです
  • 記録簿の有無。走行距離と整備履歴の裏づけがあるかどうか

部品供給は良好な部類で、マツダによる旧型車部品の再供給も行われています。趣味車として現実的に維持しやすい一台です。

マツダという会社の逆張りの気質

マツダは、ロータリーエンジンという他社が手を引いた技術を実用化した会社です。多数派と同じ道を選ばないという気質は、この会社の歴史を通じて一貫しています。

小型オープンスポーツが儲からないと言われた時代に、あえてそこへ資源を投じた判断もまた、その気質の現れでした。そして今回もまた、逆張りは正しかったのです。

世界一売れた二座席オープンへ

初代の成功を受け、ロードスターは世代を重ね、二座席オープンスポーツとしてもっとも多く生産された車として記録に名を残しました。日本車がひとつのジャンルの世界標準になった稀な例です。

各国のレースやワンメイクの催しでも使われ、運転を学ぶための車としても定着しました。速さではなく楽しさで世界を取った——初代の思想は、いまも変わらず受け継がれています。

よくある質問

Q. 1.6リッターと1.8リッターはどちらが良いのですか

A. 軽快さと回す楽しさを重視するなら1.6、余裕のある走りを求めるなら1.8が向くとされます。年式によって補強や装備も異なるため、性格の違いとして捉えるのが適切です。

Q. リトラクタブルヘッドライトの維持は大変ですか

A. モーターやリンク機構の劣化はありますが、部品や修理の情報が豊富なため、旧車としては対処しやすい部類です。左右の動きに差が出ていないか確認してください。

Q. 初めての旧車として選べますか

A. 部品供給と整備情報の豊富さから、旧車の入門として適した一台とされています。ただし腐食の進んだ個体は例外で、車体の状態を最優先に選ぶ必要があります。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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