1984年6月、トヨタは日本の自動車史に新しい1ページを刻んだ。国産初の量産ミッドシップカー、MR2(AW11型)の誕生である。「Midship Runabout 2seater」の頭文字を取ったその名のとおり、エンジンを運転席の背後に積む本格レイアウトを、カローラ並みの価格で実現。「ミッドシップは高嶺の花」という常識を打ち破った革命児だ。

カローラの部品で作ったフェラーリレイアウト
AW11の開発思想は徹底した「既存部品の流用」にある。エンジン・トランスミッションはFFカローラ(AE82系)のパワートレインをそのまま後方に移設。サスペンションも前後ストラットのシンプルな構成だ。これにより車両価格はわずか160万円台からに抑えられた。フェラーリやランチアと同じミッドシップレイアウトが、大卒初任給の1年分以下で買えた——これがAW11の革命だった。
主要スペック
- 4A-GELU型:1.6L 直4 DOHC・130ps(AE86と同系の名機)
- 4A-GZE型:1.6L 直4 DOHCスーパーチャージャー・145ps(1986年追加)
- 全長×全幅×全高:3,925×1,665×1,250mm
- ホイールベース:2,320mm
- 車両重量:950〜1,130kg
- 駆動方式:MR(ミッドシップ・後輪駆動)
- ボディ:ノッチバッククーペ、Tバールーフ設定あり
1986年のマイナーチェンジで追加されたスーパーチャージャー仕様(4A-GZE)は、過給による分厚いトルクで走りが一変。低回転から効くルーツ式スーパーチャージャーはミッドシップの軽快さと相性抜群で、現在も中古市場で最も人気の高いグレードだ。
現在の相場
- NA(4A-G):100万〜250万円
- スーパーチャージャー:150万〜350万円
- チェックポイント:リアトランク・サイドシルの錆び、スーパーチャージャーのクラッチ作動、Tバーの雨漏り。タマ数は減少の一途で、無改造車は希少。
「乗用車の部品でスポーツカーを作る」というAW11の思想は、後のMR2(SW20)、MR-S、そして世界のライトウェイトスポーツに影響を与えた。小さなボディの背後から聞こえる4A-Gの咆哮は、運転好きにとって永遠のごちそうである。
※相場は市場の状況によって変動します。ここに挙げた金額はあくまで目安であり、車両の状態・記録簿の有無・修復歴によって大きく変わります。実際の売買では専門店や複数の査定でご確認ください。
よくある質問
Q. なぜミッドシップなのに手の届く車になったのですか
エンジンと変速機をFFカローラのものごと後方へ移し替えるという発想が効いています。懸架装置も前後とも簡素なストラット式でまとめられ、専用設計を最小限に抑えたことで価格が抑えられました。
Q. 自然吸気とスーパーチャージャーはどちらが良いですか
1986年追加のスーパーチャージャー付きは低い回転から力が出て、軽い車体との相性がよく人気があります。一方の自然吸気は4A-Gらしく高回転まで回して楽しむ性格で、軽さの美点はこちらの方が際立ちます。
Q. 運転で気をつけることはありますか
ホイールベースが2,320mmと短く、重量が後ろ寄りのため、限界を越えたときの動きは唐突です。前後のタイヤの銘柄を揃え、空気圧を指定どおりに保つだけでも挙動の唐突さはかなり和らぎます。
Q. 中古車ではどこを見るべきですか
リアのトランクまわりとサイドシルの錆が要注意です。スーパーチャージャー車では過給機を断続するクラッチが正常に働くか、Tバールーフ車では雨漏りの跡があるかどうかも確認しておきましょう。
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