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Porsche 928——911の後継として生まれたV8、ヴァイザッハ・アクスルという発明

Porsche 928 の外観

928は、ポルシェが自らの代名詞を捨てようとした車です。空冷でも、水平対向でも、リアエンジンでもない。前に水冷のV型8気筒を置き、後ろに変速機を配した完全な新設計で、911を置き換えるべく生まれました。結果として911は生き延び、928は独自の道を歩むことになります。

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トランスアクスルと、後輪の向きを制御する車軸

928の骨格を決めているのは、エンジンを前に、変速機を後車軸側に置くトランスアクスル方式です。両者を剛性の高い管で結び、前後の重量配分をほぼ均等に近づけました。

  • 前置きエンジンと後方変速機による、均等に近い前後重量配分
  • 水冷のV型8気筒により、静粛性と長期的な安定性を確保
  • アクセルを戻した際の挙動変化を抑える後輪の懸架機構
  • 軽量化のため、扉やボンネットなどにアルミ合金を採用

もう一つの発明が、開発拠点の地名を冠した後輪の懸架機構です。旋回中にアクセルを戻すと、荷重移動によって後輪が外へ流れやすくなります。この機構は、その際に生じる力を利用して後輪の向きをわずかに変化させ、車体の挙動を安定させました。受動的な仕掛けで安全性を高めるという発想は、後の多くの車に影響を与えています。

設計思想——ポルシェが考える大人のスポーツカー

928が目指したのは、峠を攻めるための車ではなく、大陸を横断できるスポーツカーでした。低い着座位置と広い視界、静かな室内、そして高速域での圧倒的な直進安定性。

内装にも独自の工夫があり、計器の並ぶ部分がハンドルの高さ調整に合わせて一緒に動く仕組みなど、運転する人を中心に据えた設計が随所に見られます。

911との関係、そして市場での評価

登場時、928は権威ある賞を受け、スポーツカーとして初めてその栄誉を得ました。技術的な評価は当初から高かったのです。

しかし顧客は911を手放しませんでした。伝統的な形と、リアエンジンならではの独特の走りへの支持は根強く、結局928が911を置き換えることはありません。皮肉なことに、この失敗こそが911を今日まで生き延びさせたともいえます。

主要スペック

項目内容(おおよその値)
エンジン形式水冷V型8気筒(後期は各バンク2本カム・4弁式)
排気量約4,500cc〜約5,400cc(年式による)
最高出力240馬力前後〜350馬力前後とされる
変速機5速マニュアルまたは自動変速機(後車軸側に配置)
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動(トランスアクスル)
車体2+2クーペ、アルミ合金製の外板を一部採用
生産台数6万台規模とされる
生産年1977年〜1995年ごろ

コレクターズガイド——なぜ今も価値があるのか

928は長く安価に流通していましたが、近年は良質な個体の希少さが認識され、評価が上向いています。特に手動変速機の仕様と、最終期の高性能版は数が限られます。

  • カムシャフト駆動のベルト交換など、周期的な整備の履歴が最重要
  • 電子部品と配線の劣化は年式相応に進むため、状態確認が必要
  • 手動変速機の個体は少なく、評価が明確に高い
  • 内装の樹脂部品や電動装備は、部品の入手に時間がかかる場合がある

整備を先送りした個体は後の負担が大きくなります。記録の残る車を選ぶことが、928では特に効いてきます。

ポルシェという会社の転換期

1970年代のポルシェは、リアエンジンの将来性に疑問を抱いていました。安全と排出ガスの規制が強まるなか、前置きエンジンと水冷への転換が必要だと判断したのです。

928はその答えでしたが、同時に会社の哲学を揺るがす問いも突きつけました。伝統を捨てるべきか、磨き続けるべきか。最終的にポルシェは両方を選び、その経験が現在の多様な車種構成につながっています。

その後と、いまの評価

928の生産終了後、ポルシェの前置きエンジン車の系譜は途絶えましたが、その思想は後のグランツーリズモやサルーンに受け継がれました。トランスアクスルと重量配分への執着は、いまも同社の設計に息づいています。

近年は映画や写真を通じて再発見され、若い世代からの支持も広がりました。時代を先取りしすぎた車が、時間を味方につけたのです。

よくある質問

Q. 928は911の後継だったのですか?

A. 当初はそのつもりで開発されました。しかし911への支持が根強く、結果として両者は並行して販売されることになりました。

Q. ヴァイザッハ・アクスルとは何ですか?

A. 旋回中にアクセルを戻したときの挙動を抑えるための後輪の懸架機構です。荷重の変化を利用して後輪の向きをわずかに変え、安定を保ちます。

Q. どの年式を選ぶべきですか?

A. 装備と動力に余裕のある後期型が扱いやすい一方、初期型は軽さと素直さが魅力です。整備履歴の確かさを優先して選ぶのが現実的です。

Q. 維持で最も重要な点は?

A. カムシャフト駆動のベルトをはじめとする周期的な整備です。交換時期を過ぎた個体は、走行前に必ず確認してください。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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