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Ferrari Dino 246 GT——フェラーリを名乗らなかったフェラーリの哀しき美しさ

Ferrari Dino 246 GT クラシック

1969年のジュネーブ・ショー。新型スポーツカーが登場した。美しいプロポーション、ピニンファリーナの流麗なライン、官能的なV6サウンド。しかし、このクルマのフロントフードには「Ferrari」のバッジがない。代わりにあるのは「Dino」という文字だけ。エンツォ・フェラーリが若くして世を去った息子に捧げた名前——それがこの車の持つ、最も美しく哀しい物語の始まりだ。

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アルフレーディーノ・フェラーリ——父と息子の夢

エンツォ・フェラーリには愛する息子がいた。アルフレーディーノ・フェラーリ、通称「ディーノ」。1932年に生まれたディーノは父と同じくエンジニアリングへの情熱を持ち、若くして才能の片鱗を見せていた。しかし彼は筋ジストロフィーという難病に侵されており、1956年、わずか24歳で亡くなった。エンツォは息子の死を生涯最大の悲しみとして語っており、ディーノが設計に関わったV6エンジンを世に出すことを、息子への追悼とした。

ディーノが携わったV6エンジンは、フォーミュラ2用として開発されたものだった。その排気量を増やし、市販スポーツカーに搭載することを、エンツォは決意した。しかし、エンツォは頑なな哲学を持っていた——フェラーリのバッジは「V12エンジン搭載車にのみ許される」。V6エンジンのスポーツカーに「Ferrari」の名をつけることは、エンツォにとって信念に反することだった。こうして生まれたのが「Dino」という独立したブランドだった。

246 GT——完成されたフォルムの秘密

1969年に正式発売されたDino 246 GTは、ピニンファリーナの傑作デザインを持つ。全長4,235mm、全幅1,702mmというコンパクトなボディに、2.4リットルV6エンジンがミッドに搭載される。エンジンの搭載位置は縦置き(インライン)で、トランスアクスル(ギアボックスとデフを一体化したもの)と組み合わせて重量バランスに優れた構成となっている。

項目詳細
製造年1969〜1974年
エンジン2.4L V6 DOHC(横置き)
最高出力195馬力 / 7,600rpm
変速機5速MT
車重1,080kg
最高速度235km/h
0→100km/h7.1秒
生産台数2,487台(246 GT: 2,295台、246 GTS: 192台)

フェラーリより速い?——サーキットでの評価

Dino 246 GTの性能は当時のフェラーリV12モデルには及ばなかったが、ハンドリングのバランスという点では「最良のフェラーリ」とも言われた。重量配分が理想に近く、軽量なボディと高回転型V6の組み合わせは、コーナリングの楽しさという面で他を圧倒した。イギリスの自動車誌「オートカー」は1970年に「現行フェラーリの中で最も操縦しやすい」と評し、高い評価を与えた。

当時のライバルはポルシェ911S、ランボルギーニ・ウラッコ、デ・トマソ・パンテーラなど。246 GTはその美しいデザインと扱いやすさで独自のポジションを確立した。今日、ヒストリックカー市場でDino 246 GTは非常に高い人気を誇り、「フェラーリを名乗らないフェラーリ」として特別なプレミアムがつく。

フェラーリへの昇格——死後の再評価

Dino 246 GTの生産終了後、フェラーリはV8を搭載した「308 GT4」と「308 GTB」を後継として投入したが、これらには「Ferrari」のバッジが付けられた。V8でもフェラーリを名乗ることへの許容は、エンツォの哲学が時代とともに変化したことを示している。後年、フェラーリ社はDino 246 GTを公式に「フェラーリファミリーの一員」として認め、現在のフェラーリ公式ヒストリーでも246 GTはフェラーリの歴史の重要な一ページとして扱われている。

Dino 246 GTは1974年に生産終了となった。その後継として設計された308 GT4は、ミッドV8を搭載した2+2シーターという異なる方向性を持ち、246 GTの持っていた「完璧なバランス」を求める声は強かった。1975年に登場した308 GTBは、ある意味246 GTが目指した「完璧なミッドエンジン・スポーツカー」の理想をV8で実現した後継者と言えるかもしれない。しかし、息子への想いが込められた「Dino」の名の下に生まれたあの246 GTの詩情は、永遠に代わるものがない。

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