「マティーニをシェイクしてではなく、ステアして」——ジェームズ・ボンドのトレードマークと同様に、アストン・マーティンDB5もシリーズを通じて「007の車」として定着した。1964年の「ゴールドフィンガー」で初登場以来、DB5は映画史上最も有名な自動車の一つとなった。しかしDB5の価値は映画との関係だけではない。
DBとはダビッド・ブラウンのイニシャル
「DB」はアストン・マーティンを1947年に買収したデービッド・ブラウン(David Brown)のイニシャルだ。DB1、DB2、DB4、DB5とシリーズが続き、DB5は1963年にデビュー。イタリアのカロッツェリア・トゥーリング・スーパーレッジェーラがデザインしたボディは、英国とイタリアの美意識が融合した傑作だ。
スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 製造年 | 1963〜1965年 |
| エンジン | 4.0L DOHC 直列6気筒(ヴァンテージ仕様288馬力) |
| 最高出力 | 282馬力(標準)/ 325馬力(ヴァンテージ) |
| 変速機 | 5速MT(ZF)またはTorqueFlite 3速AT |
| 車重 | 1,466kg |
| 最高速度 | 235km/h(標準)/ 249km/h(ヴァンテージ) |
| 生産台数 | 1,059台 |

ゴールドフィンガー——映画が作った神話
1964年の「007/ゴールドフィンガー」でDB5が初登場した際、イギリスの少年たちは熱狂した。機関銃、機雷散布機、タイヤ切り裂き機、射出座席——映画の中の特殊装備(ボンド・カー仕様)は現実のDB5には搭載されていないが、EON・プロダクションが製作した実際のプロップカーには一部の装備が実装されていた。このプロップカーは数十年後にオークションで数十億円で落札された。
エンジンの官能性——直6の音色
DB5の4.0リットル直列6気筒エンジンは「アストン・マーティンの音」として独特の地位を持つ。中低速では紳士的で静かだが、高回転ではスポーツカーらしい咆哮を放つ。この「紳士と獣の二面性」こそがアストン・マーティンというブランドの本質だ。

現代におけるDB5——100億円のオークションと限定復刻
2019年、アストン・マーティンは「DB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション」を25台限定で製作。映画の特殊装備(機能しない機関銃など)を再現したこのモデルは約340万ドルで販売された。また、映画使用のオリジナルプロップカーの一台は2019年のオークションで640万ドル(約7億円)で落札された。「007の車」の価値は半世紀以上経っても衰えていない。
コレクターズガイド:なぜ今も価値があるのか
クラシックカーの価値は単なる希少性だけでは決まらない。歴史的意義・機械的完成度・デザインの普遍性・来歴(プロヴェナンス)——これらが揃った車だけが時代を超えて評価され続ける。
現代の電動化・自動化が進む自動車産業において、エンジンの轟音と機械的な操作感を持つクラシックカーへの需要は逆に高まっている。ペブルビーチ・コンクール・デレガンス、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどの国際的なイベントでの人気は衰えを知らない。
投資対象としての側面も無視できない。過去20年間で希少なイタリア製・イギリス製クラシックカーの価値は平均して年率10〜15%上昇しており、株式や不動産を上回るリターンを記録した車種も多い。ただし維持費・保管環境・整備記録の管理が資産価値の維持に直結することを忘れてはならない。