1948年のロンドン・モーターショー。戦争で疲弊したイギリス国民の前に、信じられない美しさと数字を持つクルマが姿を現した。ジャガーXK120。「120」は最高速度120mph(約193km/h)を意味する。戦後の物資不足の時代、乗用車が100km/hに届けば十分だった時代に、193km/hという数字は宇宙的な遠さにある目標だった。
XKエンジン——50年使われた傑作
XK120の名を不滅にしたのは、そのエンジンだ。DOHC(ツインカム)直列6気筒、3.4リットル、160馬力。このXKエンジンは、基本設計を変えずに1948年から1992年まで44年間使われ続けた。シリーズ3のEタイプ(1971年)にも、XJ-Sにも、このエンジンの系譜が続く。
スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 製造年 | 1948〜1954年 |
| エンジン | 3.4L DOHC 直列6気筒(XKエンジン) |
| 最高出力 | 160馬力 / 5,000rpm |
| 変速機 | 4速MT(後期OD付き) |
| 車重 | 1,295kg |
| 最高速度 | 193km/h(公称) |
| 実測 | 201km/h(1949年テスト記録) |
| 生産台数 | 12,078台(OTS+FHC+DHC合計) |

実際の120mph——公道での記録更新
1949年、ジャガーはXK120の最高速度を公式に証明するため、ベルギーのオートルートで実走テストを実施。当時の公道記録は200km/h超を記録し、「最高速度193km/h」の主張が事実以下であることが証明された。この記録はBBCで報道され、英国中が歓喜した。
アルミとスチール——生産の変化
XK120は当初、軽量アルミニウムボディで製造される予定だったが、需要の爆発的増加に対応するためスチールボディに切り替えられた。最初の240台のみがアルミボディ(現在は特に希少価値が高い)で、残りはスチール製となった。ボディスタイルはオープンツーシーター(OTS)、固定屋根クーペ(FHC)、ドロップヘッドクーペ(DHC)の3種。

現代における評価
XK120はジャガーが世界的名声を確立した最初のクルマ。「戦後ブリティッシュ・スポーツカー」の筆頭として、ヒストリックカー市場で常に人気が高い。オリジナルのアルミボディ初期型は特に価値が高く、コンクール・デレガンスの常連でもある。
コレクターズガイド:なぜ今も価値があるのか
クラシックカーの価値は単なる希少性だけでは決まらない。歴史的意義・機械的完成度・デザインの普遍性・来歴(プロヴェナンス)——これらが揃った車だけが時代を超えて評価され続ける。
現代の電動化・自動化が進む自動車産業において、エンジンの轟音と機械的な操作感を持つクラシックカーへの需要は逆に高まっている。ペブルビーチ・コンクール・デレガンス、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどの国際的なイベントでの人気は衰えを知らない。
投資対象としての側面も無視できない。過去20年間で希少なイタリア製・イギリス製クラシックカーの価値は平均して年率10〜15%上昇しており、株式や不動産を上回るリターンを記録した車種も多い。ただし維持費・保管環境・整備記録の管理が資産価値の維持に直結することを忘れてはならない。