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Volkswagen Corrado——狭角V6と可動ウイング、ワーゲンが本気で作った速いクーペ

Volkswagen Corrado の外観

コラードは、フォルクスワーゲンが「速いクーペ」に正面から取り組んだ数少ない車です。控えめな車体に、当時の同社が持てる技術を惜しみなく詰め込みました。派手さはありませんが、中身を知るほど印象が変わる——そういう性格の一台です。

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Gラーダー、狭角VR6、そして自動で立ち上がる翼

コラードの技術的な見どころは大きく三つあります。第一が、初期の主役となったGラーダー式スーパーチャージャーです。渦巻き状の部屋のなかで可動部品が偏心運動し、空気を押し込むという独特の機構で、低回転から過給が立ち上がる素直な特性を持っていました。

第二が、後に投入された狭角V型6気筒、いわゆるVR6です。バンク角を極端に狭めることで一つのシリンダーヘッドに6気筒を収め、直列4気筒とほぼ変わらない全長で6気筒を横置きできるという発想でした。前輪駆動の限られた機関室に多気筒を積むための、きわめて独創的な解答です。

  • 低回転から効くスーパーチャージャー仕様と、滑らかな6気筒仕様の二本立て
  • 速度に応じて自動で立ち上がる可動式リアスポイラー
  • 前輪駆動ながら高い直進安定性を狙った足回りの設定

第三が、一定速度を超えると自動で持ち上がるリアスポイラーです。停止すれば格納され、外観を損ないません。

設計思想——ゴルフの派生に見えて、別の狙いを持つ

コラードはシロッコの単純な後継ではありません。開発では、シロッコを下位に残しつつ、より高価で本格的なクーペを上に置く構想が語られていました。実際には市場の反応と価格帯の重なりから両立は難しく、結果としてシロッコの後を継ぐ形に落ち着きます。

それでも車体の作りには当初の狙いが残りました。厚みのある鋼板、丁寧に固められた骨格、大人二人が快適に長距離を移動できる室内。軽さで走らせるのではなく、剛性と動力で速さを作るという、フォルクスワーゲンらしい真面目な設計です。

同時代のクーペのなかでの位置づけ

1990年前後の欧州には、実用車由来のスポーティクーペが数多くありました。そのなかでコラードは、大衆ブランドが名乗るには本格的すぎる中身を持っていた点で異質です。上級ブランドのクーペに近い走りを、より現実的な条件で手に入れられる存在として支持を集めました。

一方で、その真面目さは商業的には諸刃の剣でもありました。生産台数は10万台に届かなかったとされ、日本を含む多くの市場で希少な存在になっています。

主要スペック

項目内容(おおよその値)
エンジン形式直列4気筒 スーパーチャージャー/狭角V型6気筒(VR6)
排気量約1,800cc(過給付き4気筒)/約2,800〜2,900cc(VR6)
最高出力160馬力前後〜190馬力前後とされる
変速機5速マニュアル、一部に自動変速機
駆動方式フロントエンジン・前輪駆動
特徴装備速度感応式の可動リアスポイラー
ボディ3ドア・クーペ(ハッチゲート)
生産年1988年〜1995年ごろ

コレクターズガイド——なぜ今も価値があるのか

コラードは長く不当に安く扱われてきましたが、近年は評価が上向いています。作られた台数の少なさに加え、Gラーダーという他に例のない機構と、VR6という独創的なエンジンの両方を体験できる唯一のモデルだからです。

  • Gラーダー仕様は過給機の定期的な整備が前提。履歴の確認が最重要
  • VR6は基本的に頑丈だが、冷却系と点火系の状態が寿命を左右する
  • リアスポイラーの昇降機構は固着しやすく、動作確認は必須
  • サンルーフ周り、リアハッチ下、フェンダー内側は錆の要注意箇所

フォルクスワーゲンの技術志向という背景

フォルクスワーゲンは大衆車メーカーでありながら、技術的な冒険を定期的に行ってきた会社です。空冷から水冷への全面移行、前輪駆動化——いずれも社運を賭けた転換でした。

Gラーダーも狭角V6も、その系譜の産物です。前者は複雑さゆえに短命に終わりましたが、後者はその後の主力エンジンとして長く生き延び、四輪駆動モデルや上級車にも展開されました。挑戦の成否が明確に分かれた例として、技術史の観点からも興味深い車です。

現在の評価と、ブランドの今

コラードの後継クーペは長く現れず、その役割はゴルフの高性能版が引き受けました。性能を担う系譜はGTIやRという名で確立され、現在は電動車にも引き継がれています。

派手な戦績のある車ではありません。しかし「大衆ブランドが本気で作るとどうなるか」という問いに、これほど明快に答えた例も少ないのです。静かな名車という表現が、コラードにはよく似合います。

よくある質問

Q. G60とVR6、どちらを選ぶべきですか?

A. 独特の機構を味わいたいならG60、日常的に使いやすい滑らかさを求めるならVR6が向きます。ただしG60は過給機の整備が前提になるため、信頼できる整備先の確保が先決です。

Q. 可動スポイラーは手動で操作できますか?

A. 多くの個体で、車内のスイッチによる手動操作が可能です。長く動かさないと機構が固着するため、定期的に上げ下げしておくのが良いとされています。

Q. シロッコの後継と考えてよいですか?

A. 結果としては後継の位置に収まりましたが、開発当初はより上位のクーペとして構想されていました。作りの丁寧さにその名残があります。

Q. 部品の入手は難しいですか?

A. ゴルフ世代と共通する機関部品は入手しやすい一方、コラード固有の内外装部品は探すのに時間がかかります。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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