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Bugatti Type 57 Atlantic——世界で最も美しい自動車と呼ばれた4台の奇跡

タイプ57 アトランティックは、現存する3台(もしくは4台)だけが知る孤高の美しさを持つ。流麗なボディに走る縦のフィン、リベットで留められた接合部——それはジャン・ブガッティが父エットーレの哲学を昇華させた、自動車史上最大の芸術品と呼ばれる。

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ジャン・ブガッティの設計思想

エットーレの息子ジャン・ブガッティが手がけたボディデザインは、当時主流だったクラシカルなカロッツェリア様式を完全に超越していた。飛行機のようなバブルキャノピー、マグネシウム合金製のセンタースパイン、そして翼断面をそのまま写したようなフォルムは、1930年代のデザイン言語とは別次元にあった。

4台という謎

製造されたアトランティックは諸説あるが3〜4台とされる。そのうち1台は第二次世界大戦中に行方不明となり「ロストアトランティック」として今も伝説になっている。現存する2台はラルフ・ローレン氏のコレクションとピーターセン自動車博物館にあり、世界で最も保険評価額が高い自動車のひとつとされる。

なぜこれほど高く評価されるのか

希少性、芸術性、歴史的重要性のすべてが頂点に達したクルマは世に多くない。タイプ57アトランティックはその三拍子をすべて備え、なおかつ「美しい」という感性的な評価においても議論の余地がない。オークション推定価格は4000万ドル超とも言われ、市場に出ることすら稀な存在だ。

主要スペック

エンジン直列8気筒 DOHC 3.3L(3,257cc)
最高出力約170馬力(Type 57S)/スーパーチャージャー付きType 57SCは約200馬力とされる
駆動方式フロントエンジン・後輪駆動
生産期間1936〜1938年
生産台数アトランティックは4台(うち3台が現存とされる)
ベースのType 57シリーズ1934〜1940年に約710台

コレクターズガイド:なぜ今も価値があるのか

クラシックカーの価値は単なる希少性だけでは決まらない。歴史的意義・機械的完成度・デザインの普遍性・来歴(プロヴェナンス)——これらが揃った車だけが時代を超えて評価され続ける。

現代の電動化・自動化が進む自動車産業において、エンジンの轟音と機械的な操作感を持つクラシックカーへの需要は逆に高まっている。ペブルビーチ・コンクール・デレガンス、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどの国際的なイベントでの人気は衰えを知らない。

投資対象としての側面も無視できない。過去20年間で希少なイタリア製・イギリス製クラシックカーの価値は平均して年率10〜15%上昇しており、株式や不動産を上回るリターンを記録した車種も多い。ただし維持費・保管環境・整備記録の管理が資産価値の維持に直結することを忘れてはならない。

芸術家の息子が作った走る彫刻

エットーレ・ブガッティは自動車技術者である前に芸術家だった。画家の父を持ち、自身も彫刻・絵画に造詣が深いエットーレにとって、クルマは単なる機械ではなく芸術表現の媒体だった。「どんな部品も美しくなければならない——たとえ誰にも見えない場所でも」という彼の哲学は、エンジンベイの仕上げにまで及んだ。

モルスアイム——アルザスの小さな工房から世界へ

ブガッティの工場はフランス(現在の国境)アルザス地方のモルスアイムという小さな町に置かれた。エットーレはここに工場だけでなく住居・庭園・厩舎・ホテルを作り上げ「ブガッティ村」と呼ばれる独自の世界を構築した。現代のヴェイロン・シロン・ボルタも同じモルスアイムで生産され、100年以上変わらないこの地への帰属がブランドの精神的拠り所となっている。

現代のブガッティ——マルチリオン・ドルの工芸品

2005年に登場したヴェイロンは1001馬力・406km/hという数値で世界を驚かせた。その後継シロンは1500馬力・490km/h(速度リミッターあり)を実現。ヴァンパレードは不定形の4リッターターボをバッキアラッティが架装した、価格1800万ドルの世界一高価な自動車となった。クラシック・ブガッティの稀少性と現代モデルの超豪奢さが重なり、ブガッティというブランドの価値は今や他の追随を許さない境地にある。

よくある質問

Q. 何台作られたのですか

A. 3台とも4台とも言われ、確定していません。うち1台は第二次世界大戦中に行方が分からなくなり、「ロスト・アトランティック」として今も探し続けられています。

Q. 背中の縦のフィンとリベットは何のためにあるのですか

A. 原型となった試作車では、加工の難しい素材を溶接せずに接合する必要があり、外側にフランジを立ててリベットで留めました。その処理が、量産版でも意匠として受け継がれています。

Q. 現存する車はどこにあるのですか

A. 所在が公にされている個体は、ラルフ・ローレン氏のコレクションと、米国のピーターセン自動車博物館に収まっているものなどです。一般に公開される機会はごく限られています。

Q. なぜこれほど別格に扱われるのですか

A. 希少性・造形・歴史的重要性のすべてが高い水準で揃っているためです。設計はエットーレの息子ジャン・ブガッティで、1930年代のカロッツェリア様式を明確に超えた造形と評価されています。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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