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ホンダ シビック(初代)——CVCCが解いた排ガスの難題、世界がホンダを認めた日

ホンダ シビック(初代)の外観

一台の小さな日本車が、世界の自動車産業を静かにざわつかせたことがあります。初代ホンダ シビック——正確には、その心臓に組み込まれた CVCC という燃焼方式が、当時「解決不能」とまで言われた難題に答えを出したのです。

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CVCC——副室が生む二段構えの燃焼

CVCCの仕組みは、意外なほど機械的です。主となる燃焼室の脇に小さな副室を設け、そこへ濃い混合気を送り込んで確実に点火する。生まれた火は主室へ吹き出し、そちらに満たされた薄い混合気に燃え移ります。

薄い混合気は本来、火がつきにくいという弱点があります。しかし濃い種火を用意することでそれを克服し、結果として有害成分の発生そのものを抑えることに成功しました。排出後に処理装置で浄化するのではなく、そもそも汚さない——発想の順序を入れ替えたところに、この技術の非凡さがあります。

後発メーカーが選んだ勝負どころ

当時のホンダは、四輪車の分野では歴史の浅い後発企業でした。生産規模でも販売網でも大手に及ばない立場です。

だからこそ、正面から規模を競うのではなく、誰も越えられていない技術の壁を先に越えるという道を選びました。世界的に厳しい排出ガス規制が導入されようとしていた時期に、それを最初に満たしてみせることは、規模の差を一気に無効化する切り札になり得たのです。この賭けは見事に当たりました。

小型車市場での立ち位置

1970年代前半、燃料価格の高騰を背景に、世界の市場は小さく燃費の良い車を求め始めていました。大型車を主力としてきた欧米の各社にとって、これは不慣れな戦場です。

シビックは、前輪駆動による広い室内、軽い車体、そして環境性能という三つの武器を同時に備えていました。単に安い小型車ではなく、技術的に先を行く小型車として評価された——この立ち位置が、ホンダの世界進出を決定づけます。

主要スペック

年式や仕様による差があるため、代表的とされる範囲を示します。

項目内容
車種区分小型2ボックス車(2ドア・3ドア・ワゴンなど)
エンジン形式直列4気筒 SOHC 横置き
排気量1.2リッター級を中心に、のちに拡大
燃焼方式副室を用いた CVCC 方式(一部仕様)
駆動方式前輪駆動
変速機4速マニュアルほか、簡易な自動変速機の設定あり
車体重量700キロ台からという軽量な部類
特筆事項厳しい排出ガス規制を触媒に頼らず適合させた
生産年1970年代前半から後半にかけて

コレクターズガイド:残存数の少ない大衆車

シビックは莫大な台数が作られましたが、初代の良好な個体はきわめて希少です。大衆車として使い切られ、廃車となる運命をたどったためです。

  • 車体の腐食。当時の防錆技術は現在と比べものにならず、進行している個体が大半です
  • CVCC仕様は補機類と配管が複雑で、欠品や社外品への置き換えが起きています
  • 内装部品、灯火類、エンブレムの欠品。再生産品は限定的です
  • 改造歴。後年のエンジンへ載せ替えられた個体も存在します
  • 書類の有無と登録履歴。長期抹消からの復活には手間がかかります

近年は国内外で初期型日本車の評価が高まっており、程度の良い個体は簡単には出てきません。

本田宗一郎と技術者たちの気風

ホンダは二輪車から出発し、独自の技術で世界に打って出た会社です。既存の解決策をなぞらず、自分たちの理屈で答えを出すという気風は、創業者の個性と分かちがたく結びついています。

CVCCの開発においても、若い技術者たちが試行錯誤を重ねたと伝えられます。大企業の潤沢な資源ではなく、問いの立て方の鋭さで勝負する——シビックは、その気風がもっとも幸福な形で結実した例でした。

その後のホンダへ続くもの

シビックはホンダを一躍、世界の自動車メーカーへと押し上げました。北米での現地生産へと進む道筋も、この車が築いた評価があってこそ開かれたものです。

やがてCVCCは、触媒技術の進歩によって役目を終えます。しかし「燃焼そのものを制御する」という発想は、後年の高効率エンジンや可変機構へと形を変えて受け継がれました。技術は消えても、考え方は残ったのです。

よくある質問

Q. CVCCとは何の略ですか

A. 複合渦流調整燃焼という意味の英語表記の頭文字とされています。副室で作った火種を用いて、主室の薄い混合気を確実に燃やすという考え方を指す名称です。

Q. 本当に触媒なしで規制に適合したのですか

A. 当時の厳しい規制に対し、後処理装置に頼らず適合させた点が画期的とされました。ただし年式や仕向け地によって装備は異なり、後年は他の技術との併用も行われています。

Q. いま初代シビックを探すのは難しいですか

A. かなり難しいと考えてください。大量に生産されたにもかかわらず、実用車として使い切られたため現存数が少なく、腐食のない個体はとくに希少です。

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Author of this article

クラシックカー専門ライター。自動車雑誌の編集部に12年在籍し、欧州車・国産旧車の取材を担当。独立後はイタリア・英国のクラシックカーイベント取材やオーナーインタビューを重ね、これまでに試乗・取材した旧車は300台以上。愛車はアルファロメオ ジュリア スーパー(105系)と、レストア中の国産旧車1台。「名車の物語を、次の世代に手渡す」をモットーに、スペックの羅列ではなく“そのクルマが生きた時代”まで伝える記事を心がけている。

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